脳卒中を起こさないために




 先日、長嶋監督が脳梗塞を起こし、日本列島に衝撃が走りました。
関係者の話によりますと、お酒もたしなむ程度、タバコも吸わず、健康には十分注意をされていたようです。
何か特別の原因があったのでしょうか・・・

 実は、心臓と関係があったようです。
脳卒中は日本人の死亡原因の第3位で、また、その中でも脳梗塞は近年増加傾向で、脳卒中の3分の2を占めるにいたっております。
脳梗塞は、半身が麻痺してしまったり、重症の場合は寝たきりになることもあります。

 私達にもいつ起りうるかわかりません。
この機会に、脳梗塞についてちょっと勉強してみたいと思います。


今回の場合、いろいろな言葉が病名として使われていたようですが、『脳卒中』、『脳梗塞』、『脳塞栓』の違いについて解説してください。
また、『脳溢血』とはどんな病気ですか。
脳卒中は、脳の血管に異常をきたし、起こる病気の全てをさします。
この中には大きく分けて『脳梗塞』『脳出血』『くも膜下出血』があります。
脳溢血とは脳出血のことです。

脳梗塞は、更に『脳血栓』『脳塞栓』に分かれます。
脳血栓は『高血圧』、『高コレステロール』、『糖尿病』、『喫煙』などによる、脳の血管の動脈硬化が原因になります。
脳塞栓は心臓にできた血の塊が血流によって脳まで運ばれ脳の血管が詰まってしまう病気です。
《図に表して見ましょう》



   
 


ニュースによれば、長嶋監督は不整脈から脳梗塞になったということですが、心臓の病気と脳梗塞とどんなつながりがあるのですか。
心臓に病気をもっている人のなかで、不整脈(主に心房細動)』・『弁膜症』・『心筋梗塞などがあると、心臓の中に血の塊ができやすいことがわかっています。
この
血の塊が何らかの原因により、心臓から流れ出て脳にまで達し、脳の血管を詰まらせてしまうのです。
これを脳塞栓といい、この結果が脳梗塞です。

従って、上記のような病気を持っている人は、予め血液をサラサラにする薬(ワルファリン、アスピリンなど)を服用し、血の塊の発生を防いでおく必要があります。
また、心エコーなどにより、時々血の塊ができていないかどうか検査をします。

脳塞栓症の場合は、脳の血管が悪くなくても起こる病気です。
脳梗塞症予防のためには脳ばかりでなく、心臓のチェックも必要といえます。


脳塞栓は、脳梗塞全体の何割くらいですか。
また、脳塞栓を起こす病気のなかで一番多いのは、どんな心臓の病気ですか。
脳塞栓の特徴についても教えてください。
脳塞栓は、脳梗塞全体の約3割を占めています。
また、脳塞栓を起こす心臓の病気のなかで一番多いのは、
心房細動という不整脈です。
これは脈がまったくでたらめになる病気で、症状としては動悸がありますが、まったく動悸を感じない場合もあり、この場合は放置されることになり危険です。
この不整脈によって起こる脳塞栓は、心臓が原因の脳塞栓の約7割あります。

脳塞栓により脳梗塞は詰まり方が急であるので、梗塞の拡がりは大きくなり、従って症状も重く、また死亡率も高いのが特徴です。


どんな人が脳卒中になりやすいか、教えてください。
脳卒中になりやすい人を、列記します。
  1. 六十歳以上

  2. 男性

  3. 家族に脳卒中を起こした人がいる

  4. 高血圧

  5. 糖尿病

  6. 高脂血症

  7. 喫煙

  8. 多量のお酒をのむ

  9. ストレスが多い

  10. 肥満

  11. 不整脈がある

  12. 弁膜症 、心筋梗塞がある

@、A、Bは、自分では取り除きようが無いものです。
C以下については、生活習慣および治療で改善することができ、脳卒中の予防につながります。


脳梗塞の前ぶれ(前兆)は無いのですか。
前ぶれ(前兆)としては、一時的に脳卒中の軽い発作がおきることがあります。
これを 
一過性脳虚血発作』 といいます。
一時的に詰まるが、血栓が自然に溶けたりして、症状が短いときには数秒から数分、長くても24時間以内に治まってしまう場合です。

大部分の人は治まってしまったからといって放置しますが、大変危険です。
これらは
いずれ大発作がおきる重要なサインです。
できるだけ早く専門医を受診し、精密検査を受けることが大切です。


前ぶれ(前兆)にはどんなものがあるのですか。
脳梗塞の前兆 ・・・ 一過性脳虚血発作
  1. 半身の力が抜ける感じ(食事のとき箸を落とす等)

  2. 半身のしびれ

  3. 舌のもつれ(言語障害)

  4. 片方の目が見えなくなる 、 物が二重に見える

  5. めまい(突然天井がまわる)

  6. 足がもつれる、ふらついて歩けない。

脳梗塞
の患者さんの4分の1に、このような前ぶれがみられます。

脳出血には前ぶれはありません。

くも膜下出血には、頭痛の前ぶれがあることがあります。


脳卒中の症状には、どんなものがありますか
一番多いのが、運動障害です。
片方の手足が動かなくなったり、歩けなくなったり、箸を落としたりします。

次に多いのが
言語障害です。
言葉がうまくしゃべれなくなります。

その他、物が二重に見えたり、片側の目が急に見えなくなったりします。意識が無くなったりする人も2〜3割あります。


くも膜下出血の場合は、『激しい頭痛』・『吐気』・『嘔吐』などの症状を来たします。

脳卒中を起こした場合は、できるだけ早い対処が必要で、目安として、三時間以内に治療を開始することが大切です。
そのためには、症状を良く知っておくことが大切です。


脳卒中は、まったく健康な人に突然起きる病気ではありません。
列記したような原因の積み重ねによって、少しずつ血管が悪くなり、ある日突然現れるものです。

先ず、『日ごろから原因を取り除くよう心がける』こと、第二に『前触れがあったら、たとえ症状がなくなっても必ず検査をうける』こと、第三に、今回のようなこともあるので、『心臓の病気もチェックしておく』ことが大切です。


2004年 3月

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