1983年オーストラリアの二人の医学者によって発見された胃の中に住んでいる細菌です。
胃の入口の幽門(ピロルス)付近で発見されたので、この名前が付けられました。
口を経由して胃の中に感染しますが、感染するのは乳幼児期で成人になってから感染することはほとんどありません。
衛生状態の悪い環境で糞便や水を介して感染するようです。
日本はピロリ菌の感染率が高く、2人に1人、40歳以上では約70%が感染者と言う報告もあります。 これは日本では戦前、戦中、戦後の衛生状態が悪かった時代に乳幼児期をおくった人たちの感染率が高いということです。
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では、ピロリ菌は胃の粘膜に対してどのような病気を起こすのでしょうか。 |
主な病気は胃炎
ですが、その他に胃ポリープ・胃の悪性リンパ腫・胃癌と関係があるという報告もあります。
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ピロリ菌に感染しているかどうかを調べる検査には次のようなものがあります。 |
- (1)血液検査
- 採血をしてピロリ菌に対する抗体を調べる。
- (2)尿素呼気試験
- 特殊な炭素を含んだ尿素を飲んで、前と15分後の呼気を調べる検査。
- (3)内視鏡検査
- 迅速ウレアーゼ試験、培養法、組織検査等がありますが、何れも胃の組織の一部をとってピロリ菌の存在を調べる検査です。
わが国では、この11月1日からピロリ菌に感染しているかどうかという検査と除菌の治療に対して保険が使えることになりました。
わが国の胃潰瘍・十二指腸潰瘍患者数は、96年の調査では116万人でした。
ピロリ除菌療法による再発率低下による再発低下率により、患者さんのクオリティー・オブ・ライフの改善はも勿論ですが、医療費節減にもなると言われております。
ピロリ菌の感染診断には上記5項目がすべて承認されました。
また、治療には2種類の抗菌薬(クラリスロマイシン、アモキシシリン)と酸分泌抑制剤(プロトンポンプ阻害剤)の3剤を1日2回、朝と夕食後に1週間続け、治療後4週目に除菌が完全かどうかを調べるという方法が承認されました。
- 対象はピロリ菌要請の胃潰瘍または十二指腸潰瘍の患者さんです。
除菌率は90%前後のようです。
- 副作用は下痢と味覚異常(異味感、苦味感を含む)です。
副作用が見られたら速やかに主治医に相談して下さい。 中止すると除菌されないばかりでなく、抗菌薬に対する耐性菌の出現を招く可能性があります。
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最後に除菌療法の際の主な注意点。 |
- ピロリ菌に感染している人すべてに除菌の適応があるわけではありません。
胃及び十二指腸潰瘍の再発を繰り返す患者さんのみが治療の対象になります。
ただピロリ菌がいるだけでは除菌療法を行うべきではないと言うことです。
その理由は副作用の問題や、除菌に失敗すると耐性菌が出来ることがあるからです。
- 除菌療法の際には薬はきっちり服用することが大切です。
短期治療なので1回でも飲み忘れると成功率に大きく影響します。
2000年11月 |