薬の遣い方によって、生死がわかれることがある
「技術」を辞書で引いてみると「物事をたくみに行うわざ」とでています。 伝統的な匠のわざからはじまり、難しい複雑な機械を上手に扱う技は技術として納得できます。 先日ある雑誌に次ぎのような記事が載っていました。 即ち、米国のプライマリーケア医を対象にしたアンケートで、「彼らの診療において必須と思われる診断・治療技術及び薬は何か」という問いに対して、特に薬の投薬技術が上位にランクされており、大いに驚かされました。 まず投薬が技術であるということに違和感を感じました。 因みに、5位までのランキングを並べてみましょう。
今から 40年以上まえですが、もちろん上記に上げた薬はありませんでした。 薬の数は非常に少なく、例えば降圧剤をとってみても、数種類しかありませんでした。とにかく、どれか使ってみて血圧が下がらなければ量を増やすか、他の薬を上乗せするか、または更に別の薬に変更すると言う限られたもので、技術と言われるものはありませんでした。 最近、薬について大規模試験が行われるようになり、薬について詳細な検討が行われ、多くの情報が得られるようになりました。 その結果、薬の使い方で病気が良くもなり、悪くもなるということが分かってきたのです。 |
例を挙げてみましょう。
ACE阻害薬は血圧を下げる薬ですが、他の病気の改善・保護作用があります。 以上は、ACE阻害薬についての使いかたの一端であり、これを上手に使いこなすことは、やはり大切な技術と言わざるをえません。
- 心不全の改善作用があり、心不全には必ず使われます。
- 腎保護作用もあり、投与により腎機能が改善されますが、腎機能が悪くなってきますと使い方が難しくなります。 却って悪くなることがあるからです。
- 糖尿病を合併している場合は、特に第一選択薬として使うことが勧められています。
【付 記】
米国では民間の保険が多く、カルテは自由にチェックできますので、審査が非常にきびしく、科学的根拠のない薬の使い方がされている場合は、保険料が支払れない場合があるようです。
また、診療行為に対しては常に根拠を求められ、特に投薬に対しては、その薬を投与した科学的根拠は絶対に必要とされております。
米国と較べると日本はまだ少し厳しさが足りない感じがしております。
以上、薬の情報は非常に多く、これらをよく熟知・理解し、実地臨床の場で応用できるような投薬技術を身につけることは、臨床医にとって大切なことでありますが、一方患者さんも投薬には技術があり、科学的根拠に合った投薬が成されているか常に気をつけ、そのことについて相談できる関係を主治医と作っておくべきと考えます。
2002年4月
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