骨 粗 鬆 症



最近話題になってきている『骨粗鬆症』についてのご質問を受ける事が多くなってきました。 そこで当院としても、この際、自らも『骨粗鬆症』について勉強しなおし、また患者さんにも健やかな老後を送るのに、『骨粗鬆症』が如何に大切かを再認識していただくために、今回『骨粗鬆症』を取り上げました。


 骨粗鬆症の豆知識
 ちょっと詳しく骨粗鬆症のお話




骨 粗 鬆 症 Q & A


最近骨粗鬆症と言う言葉を良く耳にしますが、なぜですか?
骨粗鬆症とはどんな病気か説明して下さい
骨粗鬆症と言われたら。。。
骨粗鬆症の予防について、教えてください



最近骨粗鬆症と言う言葉を良く耳にしますが、なぜですか?
最近50年間で、日本人の平均寿命は急ピッチで延びています。
その結果、年齢と密接な関係にある骨粗鬆症の患者数も当然増えてきています。

当医院も開業以来二十数年経ち、老人の患者数が増えてきておりますが、最近特に、転倒し骨折する患者さんが目立っており、中にはそのまま寝たきりになり、痴呆が始まっている患者さんもおられます。

殆どの患者さんが「大腿骨頚部骨折(太ももの根もとの骨折)」 か 「脊椎圧迫骨折 (背骨の骨折で背中が丸くなる)」です。
「大腿骨頚部骨折」は脳卒中、老衰に次ぐ寝たきりの3番目の原因と言われています。
一方、「脊椎圧迫骨折」については、日本人女性のかかる割合を見ると、70歳から急に増加し、80歳代以降は40%以上となり、白人女性や日系米国人と比べて、高い傾向にあるといわれています。

何れも放置するわけにはいかない社会問題になりつつあり、『骨粗鬆症』が脚光を浴びている主な原因になっています。

また、最近非常に強力な骨粗鬆症治療薬が開発され、保険適用になりましたが、これも骨粗鬆症を担当する医者を勇気づけ、俄かにクローズアップされ始めた、もう一つの原因になっているものと思われます。



骨粗鬆症とはどんな病気か説明して下さい
『骨粗鬆症』とは、いろいろな原因により骨の構造が粗くなり、「鬆(す)」 が入ったようにスカスカになった状態(骨量の減少)を言います。

その一つの原因として年齢がありますが、年齢と共に骨も年を取り弱く なります。

女性では更年期を過ぎると急に骨量の減少が速くなります。これはエストローゲンと言う女性ホルモンの減少が原因ですが、これを 「閉経後骨粗鬆症」 と言います。
背骨の圧迫骨折が多く、背中が丸くなる場合が多いという特徴があります。
男性では40歳頃から徐々に骨量は減少し始め、65〜70歳頃から骨粗鬆症にかかる割合が多くなります。


65歳以上に見られる骨粗鬆症を 「老人性骨粗鬆症」 といいます。
これは男女ともに見られ、手や足などの大きな骨が折れると言う特徴があります。

その他、年齢やエストローゲンの減少以外の原因によっておこる骨粗鬆症があります。 ある種の病気によっておこるものや、ステロイドホルモンによっておこる骨粗鬆症です。


骨は体の成長が止まると、長さも太さも一定になりますが、骨の内部では常に 「破壊(骨吸収と言う)」 と 「再生(骨形成という)」 と言うサイクルが繰り返されているのです。

この 「破壊」 と 「再生」 のバランスがとれていれば骨量は常に一定なのですが、年をとるとどうしても骨の再生の力が弱くなり、骨破壊が上回ることになり、骨がスカスカになります。

この変化が進み骨がどんどん弱くなり、骨折しやすい状態になります。
この「骨折しやすくなったとき」が骨粗鬆症だと覚えておいてください。

 (更に厳密な定義については後で述べます)

これまでは、「背中が曲がっても、転倒して太ももの骨の付け根が折れても、これらは年齢によっておこるもので、しかたのないもの」 という考えが、患者さんは勿論、医者の間でも一部にはあったようです。
しかし、最近生活習慣の改善や進歩した治療法により、これらは予防可能である事がはっきりと証明され始めています。

丸背になったり、転倒骨折したりして、楽しむべき老後の生活を暗くしないためには、骨粗鬆症に対する新しい知識と正確な理解が必要と思います。



骨粗鬆症と言われたら。。。
骨粗鬆症はすぐに骨折ではありません。
既に骨量が減ってしまっている人でも、予防の方法があります。
骨粗鬆症に対して、ガイドラインに沿った治療を始めることが第一です。
治療を続けながら以下の点に注意して骨折を防いでください。

骨折する部位は大体決まっており、これは力が加わった場所ではなく、この場所が骨として弱い部分だからです。

弱い部分とは
  1. 背  骨
  2. 太ももの付け根
  3. 手  首
  4. 二の腕の付け根
です。

背骨の場合は、重い物を持ったりしたときなどに、急に激しい痛みなどと共に骨折します。 この場合は骨が完全につぶれてしまいますが、軽い場合は痛みを感じないこともあります。
手首や二の腕の骨折の場合は転倒によります。
太もも付け根の骨折の場合は、転倒・しりもちで起こります。

結局、『転ばないようにすることが一番大切』 と言うことになります。


転倒防止のためのポイントは、
  1. 運動等で筋力アップを行う。 これにより反射神経も良くなります。

  2. 複数転倒者に対しては、原因を究明し注意する。

  3. 転倒を来たしやすい疾患の治療。

  4. 服用中の薬剤について、そのチエックと必要最小限の薬剤にすることが大切。

  5. 住居の見なおしについて。
    例えば段差をなくす、手すりをつける、夜間の明かり、安定した靴、動きやすい服装等です。


 骨折を起してしまった場合は、どうしたら良いでしょうか。

患部を固定して、出来るだけ速く体を動かすことが大切です。
固定したら、その時点から歩きます。
早期運動は筋力の低下を防ぎ、骨からカルシウムの溶け出すのを防ぎます。
また、そのまま動けなくなり、寝たきり→痴呆 と進む危険性があるため、早期運動は特に大切です。

2002年7月

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