クリティカルパスについて



今回は「病気のお話」はお休みして、医療に関するお話をしてみましょう。

クリティカルパス(クリニカルパスとも言う)と言う言葉を聞いた事がありますか?

     聞きなれない言葉ですが、わが国では数年前から使い始められました。
     一口で言うならば医療の標準化と言うことになります。


例えば、ある患者さんが入院してきた場合
これまでなら、主治医が大体の計画をたて(公表せず)、その都度指示を出し、
コ・メディカル(主に看護婦、技師など)はその指示を実行していくと言う
やり方でした。
クリティカルパスは、入院から退院までの標準的な計画をあらかじめ作っておき(これは医師、コ・メディカルがその病院のカルテから智恵を絞って作り上げる。これは逐次改良される。)、これにそって実行すると言うものです。
したがってこのパス(治療計画書又は治療計画表)は医師、コ・メディカルに配られ公表されることになります。

クリティカルパスのメリット
  1. 公表されるため、他科の医師やコ・メディカルの目にふれ検証されるので、医療の質が高くなる。

  2. その都度、医師の許可を受ける必要がなく手間が省ける。

  3. 経済面からは平均在院日数が短縮される。
    あらかじめ退院日がわかるので病床を計画的に活用できる。



最後に、このクリティカルパスはイラストを入れたりしてわかりやすいように作り変えられ、患者さんにも配られ、インホームドコンセント(日本語では「説明と同意」と訳されている)にも役だつことになり、大変有用で有ることが分かってきました。
更に、これを研究する「医療マネージメント学会」も作られ、全国的に広まりつつあります。

最近、医療事故が頻繁に起こり報道されておりますが、クリティカルパスは医療事故防止のためにも役立つものと期待されております。



こんなことが。。。
つい先日も、糖尿病のコントロールのため入院することになった患者さんが、入院時期が丁度お盆に重なることになりました。
「お盆は医者も看護婦も手薄になるので、入院をお盆明けに頼んでくれないか」と言う相談を持ってこられました。

最近、テレビや新聞、雑誌で医療事故が頻繁に報道され、病院も怖いことがおこり得ると言う観念ができつつあり、このような心配になったことと思います。
これは一面では正しい事で、以前のように「病院に入ったらもう安心だ」と考えるよりは良い傾向と思います。
病院は、先ず信用して治療を受けるところですが、一方、病院は間違うことも有り得るということは、常に頭に入れておく必要があると思います。

クリティカルパスは処置の全部があらかじめ決まっており、患者さんにも充分説明されますので、自分で「ああ、治療はここまできたな」とか、「あと、これとこれが残っているんだな」という見通しが分かり、医療を一緒に行っている気持ちから、相互のコミュニケイションもよくなり、安心して治療が受けられることになります。
その結果、医療事故を防ぐと言うことになり、この意味からも役立つものと考えられます。

以上、最近多発している医療事故防止についてもふれ、クリティカルパス及びそのメリットについて説明しました。


2001年 6月

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